Greeting
ご挨拶
福島県は全国3位の面積を有し、尾瀬、只見に代表される奥会津地方を始め、飯豊連峰や吾妻連峰等には原生的な自然環境が数多く残されています。高層湿原、湖沼群、針葉樹林そしてブナ林では多種多様な動植物が生息し、学術的にも貴重な地域であるとともに、多くの恩恵をもたらしてきました。
また、阿武隈山地を中心にクヌギ、コナラに代表される里山が全域に及び、人々は自然との調和ある生活を営んできました。水田が広がり、小川が流れ、隣接する森からは季節毎の豊かな恵みを得る。これらの営みは「原風景」と呼ばれる景観を生み、多くの人々を魅了してきました。さらに、100kmを越える海岸と海洋には、未知なる生物の存在を含め、自然の神秘と畏敬を感じることが出来ます。
しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故によって、これらの豊かな自然や生活、そして、景観までもが一変してしまいました。県内全域に降り注いだ放射性物質は多くの野生動植物の高濃度汚染を招き、河川や海洋へと拡散する中、その影響の全容は未だ解明されていません。
避難地区ではイノシシを始めとする野生動物の生息区域の拡大が問題視され、周辺地域への影響も懸念されています。また、将来を担う子供たちの自然体験活動の制約と減少は心身の成長や発達に深刻な影響を及ぼしています。さらに、大規模な再生可能エネルギー開発は優れた景観の喪失を招くとともに、新たな自然への脅威となりつつあります。
豊かな自然や景観は、その価値を理解するとともに、愛する心をなくしては、未来へ引き継いでいくことは出来ません。子供たちを始め、多くの人々とともに、自然観察を通し、学び伝え広め、さらには、次世代を担う人材の育成を図ることを目的とし、ここに「自然観察の会 ふくしま / ふくしま人と自然の会」を設立いたします。
2017年5月1日
設立趣意書より