会津 YUI ねっと
Aizu YUI Network
Field Note
フィールド・ノート NO.Ⅴ-2
スプリング・エフェメラル
春の妖精
早春の雑木林。その落葉した樹木の足元や日当たりの良い林縁の傾斜地に、スプリング・エフェメラル「Spring ephemeral/春の儚(はかな)きものたち」或いは「春の妖精」と呼ばれる種類の花々が目を覚まします。
なじみのある植物ではフクジュソウやカタクリがそうです。
ここ会津では更に一足早くアズマイチゲやキクザキイチゲが、色の少ない冬枯れ色の野辺を白く飾ってくれます。
そのスプリング・エフェメラルたちが花開く森の中や周辺は、比較的乾燥しにくく、また土壌も肥沃で植物にとって、とても住みやすい環境なのですが、高木が葉を繁らせると日光が地面まで届きにくくなります。
その木々の足元の林床に生きる植物たちは、一般に暗い場所でも生きられる術を持っていますが、スプリング・エフェメラルにはその術がありません。
その代わりに、彼らは雪融け直後の早春の明るい期間だけ地表に出て来る…
という生き方を選びました。
木の葉が芽吹く前の40日~60日ほどの間、葉を広げ光合成を行い、花を咲か
せ、そして結実します。
その後、木々の葉が繁り、森が薄暗くなる頃には地上部は溶けるように見えな
くなってしまいます。
そして僅かな期間に貯えた栄養を大切に利用しながら、ゆっくりと土の中で育ち、次に来る春を待ちながら、また長い眠りに入ります。
*ちなみにカタクリは発芽から開花までには7-8年を要します。
またスプリング・エフェメラルは、花が美しく目立つのも特徴です。
これはまだ肌寒い昆虫の少ない時期に効率よく受粉を促すよう昆虫の注目を集めるための作戦と考えられています。
◇日本の代表種◇
【キンポウゲ科】
キクザキイチゲ、ユキワリイチゲ、アズマイチゲ、イチリンソウ、ニリンソウ等のイチリンソウ属、フクジュソウ、
セツブンソウ
【ケシ科】
エゾエンゴサク、ヤマエンゴサク、ムラサキケマン
【ユリ科】
カタクリ、ショウジョウバカマ、ヒロハノアマナ、バイモ属